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Unbot Group CEOのブログ。中国の最新市場動向を上海から発信。越境EC・訪日インバウンド・WeChat・Weibo・EC(タオバオ)etc...

日本企業が海外で成功できなくなっている理由

私は、上海でマーケティング(デジタル中心)に携わらせてもらうようになってから、今年で7年目になります。

 

2009年〜ずっと上海で、中国に進出している、または、進出しようとしている日本企業を見て来ましたが、多くの企業が同じような問題・リスクを抱えていることに気づきました。

 

 

その問題点について、アメリカのシリコンバレーで26年に渡って製造業に携わって来た遠藤さんという方が、分かり易くインタビューで答えてくれていました。

 

techpeople.jp

 

やはり日本企業は、中国だけでなくアメリカでも同じ失敗をしていたんだなと深く納得してしまいました。

 

遠藤さんは日本の十八番である家電製品(携帯電話、パソコン、テレビ等)における大失敗を引き合いに出して、このように述べています。

 

日本メーカーは技術オリエンテッドで、3D出したら売れるんじゃないか、薄くしたら壁にかけられるんじゃないか、と馬鹿げたことをやっています。日本メーカーは、50インチのテレビが10万円をきっているころに、3Dメガネを150ドルで売っていました。眼鏡を家族の人数分買うだけでテレビの半分以上の値段がしたわけです。誰も買う訳がありません。韓国メーカーは、テレビに最初から3Dメガネを4つつけていました。

日本の企業は差別化も何もなくて、一社がやるとみんな同じことをやります。薄くすれば売れるんじゃないかと考えて、ものすごい研究開発費をかけてテレビの厚さを3センチから2センチにしました。そしてできました、となっても、結局売れません。需要がないから売れるわけないんです。韓国メーカーは最初からやってません。1センチ薄くなったところで売れないってわかってますから。ダメになるべくしてダメになったと言えます。

こうして、パソコン、携帯電話、テレビという順に日本のメーカーは玉砕してきました。

 

 

つまり、「日本企業は技術オリエンテッドで、市場のニーズではなく、技術的に優れていることを優先させる傾向が強く、ダメになるべくしてダメになった」と言ってるんです。

 

更に、彼はこうも言っています。

 

日本の中小企業を盛り上げようというプロジェクトを5年くらい前からやっていますが、最近は半分絶望しています。結局みんな井の中の蛙です。ものづくりだ、匠の技だ、といいますが、だから何だって思います。

これは私のポリシーですが、「売れてなんぼ」でしょう。昔は大手からの仕事があったから、頼まれて作っていました。だけどそれで世界に挑戦できるかというとできません。

下請けという体質だったので、セールスもマーケティングもいません。中小町工場も、2代目3代目と世代が変わって、もうちょっとできるかな、とおもっていましたが、親が景気よかったものですから、すごく甘やかされています。

いわゆる「匠の技術」というのがいかにだめかということを理解した上で、どうするべきかを考えることが大事でしょう。iPhoneの表面加工も過去の話です。本当にそれで儲かっているでしょうか?しかもそれは、氷山の一角です。日本の90%以上が中小企業ですから、氷山の一角がフォーカスされても意味がない。

 

日本の(特に)中小企業は、「下請け体質が強く、マーケティングやセールスの感覚がないから、売れる物を作るのではなく、言われたものを如何にうまく作るかにばかりフォーカス」していて、今の時代では生き残りにくいと言っています。

 

この感覚には、私自身ももの凄く共感します。

 

日本企業の多くは、「職人気質」が強く、これは「こだわりの●●で〜」とか、「ここのところが今迄のとは違って●●〜」とか、職人レベルでしか分からないような変化や進化を強調することが多い。

 

 

つまり、ほとんどがエゴです。

良いモノを作れば売れる。この分野に一番詳しい自分が言うんだから、これは良いものなんだと。

 

良いモノとは、生産者が決めるのではなく、市場(消費者)が決めるんです。

 

 

こういった感覚が極端に低い日本企業が異常なまでに多い。

 

 

だから、日本では上手くいった日本企業でも、市場(消費者)が違うアメリカや中国では受け入れられないことが多くあります。

 

 

普通に考えれば当たり前ですが、その事すら気づかない企業が多いのが現実です。

 

 

中国に至っては、きっとアメリカよりもその傾向は強くあります。

 

 

なぜなら、日本は中国よりも進んでいる(発展している)と思い込んでおり、日本で売れてるものなら中国でも憧れと共に売れるだろうと勘違いしてしまうからです。

 

 

実際に、中国で消費者向けのサービス・商品で大人気の日本企業の商品はほとんどありません。

 

 

日本ではよく日本商品の人気ばかりが報道されていますが、それは本当に一部の大手の商品だけです。

 

 

大手の商品の中でも成功している商品は本当に数少ないのが現実です。

 

 

その原因の多くが、上述の理由からくる「ローカライズの失敗」にあります。

 

 

こういった世界における市場の変化・ニーズの変化に真剣に耳を傾けなければ、日本企業は今後大変なことになると思います。

 

 

私が一番危機感を持つべきだと思っているのが、遠藤さん同様に「自動車産業」です。

 

 

――遠藤さんが次に危ないと感じる産業はありますか?

それで次に懸念しているのがやはり「自動車」です。日本の中小町工場の人向けに講演をすることがありますが、みんな井の中の蛙です。

自動車では、すでにヒュンダイなどが、こっちの市場を席巻しています。

さらにいま、テスラが出てきたことによって、自動車業界が変わりつつあります。世の中の産業の中で、自動車は最後の牙城です。なぜなら「ガソリンで動く車」という状況が50年以上変わってきませんでしたから。しかし、そこにテスラがでてきてバッテリーとモーターでいいものをつくったら勝ち、という世界を作りつつある。さらにコンピュータがくっついてコネクティッドカーになっていく。

そうなると日本はヤバい。日本には車を支える莫大なインフラが残ってて、それらが全滅になってしまう。バッテリーとモーターの自動車になったら誰でも参入できるようになりますから。

サムスンもLGも車への参入を狙っています。サムスンのR&Dセンターがここにあり、1500人を現地採用してます。こっちのエンジニアは一人あたり年1000万円ですから、一体いくら投資してるんだよっていう感じですよね。そして自動車の研究にも多くの人材を振り向けています。NVIDIAなども、車にフォーカスしはじめています。だれでも参入できる環境になっているのに、日本の企業はまだ、既存市場の占有率にあぐらをかいているように思えますね。

 

私も上述の遠藤さんとほぼ同じ意見です。

 

今はTOYOTAが過去最高益を更新していますが、いつまで続くか全く分かりません。

 

産業構造自体が大変革を起こす可能性が十分あります。

 

テスラの登場によって、自動車の未来は、水素自動車ではなく電気自動車がスタンダードになる可能性が高いと思いますし、そうなれば、おもちゃ屋さんでも自動車を作れるようになってしまう。

 

TOYOTAはそれを防ぐために水素自動車を推進しようとしていますが、世界の流れはそっちを向いていない。

 

更に、Googleが5年以内に全自動車を完成させるはずです。

 

そうなれば、車は、パソコン同様にOSの時代に移っていく。

 

つまり、パソコンの時のようにハードが強い日本企業ではなく、ソフトが強いAppleGoogleMicrosoftのようなアメリカ企業に時代が流れてしまう。

 

日本は、近年ソフトのパワーが弱く、世界においてはアメリカが圧倒的なソフトのパワーを持っていると思います。

 

このままでは、日本の基幹産業である自動車の未来が危うい。

 

自動車は日本においても産業の裾野が広いですから、ここが倒れると日本全体に想像を絶する影響があるでしょう。

 

日本企業は、今後、更に、市場が縮小し続ける国内ではなく、世界で戦わなくてはいけない。

 

その時、今のままの「職人気質」「匠の技」に頼ってばかりでは、戦えない。

 

 

そろそろ中国や韓国ばかりバカにしてないで、考え方を変えなければいけない。

 

 

日本は既に世界第二位の経済大国ですらない。

 

 

ここからは当分その地位を下げ続けることになるんです。

 

 

本当の意味で、危機感をもって世界に目を向けなければ、これからも日本企業は世界で成功できなくなっていってしまうと思います。